RICHARD MILLE / RM UP-01 FERRARI
リシャール・ミル RM UP-01 フェラーリとは何がすごいのか。厚さ1.75mmに宿る技術と美意識を読み解く
リシャール・ミルとフェラーリが生み出した「RM UP-01 フェラーリ」は、腕時計というより、ひとつのエンジニアリング作品に近い存在です。
ケース厚はわずか1.75mm。数字だけを見れば“極薄時計”ですが、この時計の本質は、薄さそのものではなく、薄さを実用時計として成立させている点にあります。
薄くするために、何を削り、何を残し、どこに強度を持たせるのか。そこには、レーシングカーの設計にも通じるような考え方が見えてきます。
この記事では、RM UP-01 フェラーリのスペックだけを並べるのではなく、なぜこの時計が特別なのか、どんな人に刺さるのか、通常の高級時計とどう違うのかをWARDROBE LAB編集部の視点で整理します。
RM UP-01 フェラーリの基本情報
RM UP-01 フェラーリ
フェラーリとリシャール・ミルの思想が重なる、超薄型ウォッチ。
フェラーリとリシャール・ミル。どちらも、単に高級という言葉では語りきれないブランドです。
共通しているのは、性能、素材、構造、そして美意識に対して一切妥協しない姿勢。2021年に長期的なパートナーシップを結んだ両者が、その関係性を象徴するモデルとして発表したのが「RM UP-01 フェラーリ」です。
この時計の凄さは、薄さだけではありません。極限まで薄くしながら、リシャール・ミルらしい耐久性や機械的な完成度を保っているところにあります。
多くの時計が“存在感”をケースの厚みや装飾で表現する中で、RM UP-01は逆の方向へ進んでいます。薄く、低く、平面的でありながら、見れば見るほど複雑な構造が浮かび上がる。このアプローチが非常に現代的です。
厚さわずか1.75mm。薄いこと自体より、薄くても使えることがすごい
極限まで薄く設計されたRM UP-01 フェラーリ。
「RM UP-01 フェラーリ」の最大の特徴は、ケースを含めた厚さがわずか1.75mmという点です。
ただし、この数字だけを切り取ると、この時計の価値を少し見誤るかもしれません。重要なのは、単に薄く作ったことではなく、着用できる時計として成立させていることです。
薄型時計は、構造上どうしても繊細になりがちです。部品の重なりを減らせば強度の確保が難しくなり、ケースを薄くすれば外部からの衝撃にも気を配る必要があります。
RM UP-01は、そうした課題に対して、部品を平面的に配置し、ケースとムーブメントを一体的に考えることで答えを出しています。
薄い時計というより、“薄さを前提に時計を再設計したもの”。そう捉えると、このモデルの異質さがより伝わりやすいでしょう。
WARDROBE LABとして面白いと感じるのは、RM UP-01がラグジュアリーウォッチでありながら、装飾ではなく構造で語る時計であること。
薄さはスペックであり、同時にデザインそのものでもあります。
フェラーリとの共同開発が生んだ、時計らしくない設計思想
ムーブメントとケースを一体的に捉え、極薄フォルムと剛性を両立。
RM UP-01 フェラーリは、リシャール・ミルとフェラーリの共同作業によって完成したモデルです。
開発には6,000時間以上を要し、何十ものプロトタイプが作られたとされています。単に薄くするのではなく、薄さ、強度、精度、耐衝撃性、着用性を同時に成立させる必要があったからです。
通常の時計では、ムーブメントの歯車や針が重なることで厚みが生まれます。RM UP-01では、その考え方を大きく変え、ムーブメントとケースを一体的に設計。重ねるのではなく、広い面積に構造を分散させることで、極薄のフォルムを実現しています。
この発想は、フェラーリの車作りにも通じるものがあります。速さだけではなく、空力、素材、重量、剛性、すべてを総合的に考える。時計でありながら、どこかレーシングマシンのような思想を感じさせます。
つまり、このコラボレーションはロゴを載せただけのものではありません。フェラーリの“性能から美しさが立ち上がる”という考え方が、時計の構造そのものに反映されているように見えます。
ムーブメントの厚さは1.18mm。手巻きキャリバーRMUP-01
厚さ1.18mmの手巻きウルトラフラットムーブメント「RMUP-01」。
RM UP-01に搭載されているのは、手巻きのウルトラフラットムーブメント「RMUP-01」です。
ムーブメントの厚さはわずか1.18mm。これだけ薄いにもかかわらず、時・分表示に加えて、ファンクションセレクターも備えています。
パワーリザーブは約45時間。薄さを優先した時計でありながら、実用的な駆動時間を確保しているのもポイントです。
薄さを追求するために、単に部品を小さくしたわけではありません。構造そのものを見直し、従来の時計製造の常識を一度脇に置くようなアプローチが取られています。
時計好きにとっては、この“常識を疑う設計”こそが、RM UP-01の最大の見どころかもしれません。
グレード5チタンが支える、軽さと剛性
グレード5チタン製の地板とブリッジが、軽さと剛性を支える。
RM UP-01のケース、地板、ブリッジには、グレード5チタンが使用されています。
グレード5チタンは、軽量でありながら高い強度を持つ素材です。航空宇宙産業や自動車産業でも使われる素材であり、フェラーリとのコラボレーションという文脈にも自然に馴染みます。
この素材によって、時計全体の軽さと剛性を両立。さらに、ムーブメントの輪列が安定して作動するための精密な土台にもなっています。
極薄の時計は、どうしても繊細な印象を持たれがちです。しかしRM UP-01は、5,000g以上の加速度に耐えることができる設計になっており、単なる薄型時計ではないことを示しています。
薄さを追求しながらも、リシャール・ミルらしい“スポーツウォッチとしての強さ”を失っていない。ここが、一般的なドレス寄りの薄型時計とは大きく異なるポイントです。
薄く、軽く、強い。
この3つを同時に成立させるために、RM UP-01では素材選びと構造設計の両面から徹底したアプローチが取られています。
ファンクションセレクターという、リシャール・ミルらしい操作感
巻き上げと時刻合わせを選択できる、独自のファンクションセレクター。
RM UP-01には、ベゼルに組み込まれたファンクションセレクターが備わっています。
10時から11時位置の間にあるセレクターで、巻き上げを意味する「W」と、針合わせを意味する「H」を選択。さらに7時から8時位置にあるもうひとつのリューズを使って、時刻調整や巻き上げを行います。
これも、普通の腕時計とはかなり違う操作感です。
一般的なリューズ操作に慣れている人からすると、最初は少し特殊に感じるかもしれません。しかし、ここにも“薄さのために操作系まで再構築する”という思想が表れています。
ただ薄いだけではなく、操作方法までデザインされている。機械としての合理性と、リシャール・ミルらしい独自性が共存しています。
特許取得のウルトラフラット脱進機
薄型化のために開発された、特許取得のウルトラフラット脱進機。
RM UP-01の開発において重要なのが、特許を取得したウルトラフラット脱進機です。
通常の脱進機では、高さが出やすい部品があります。RM UP-01では、その構造を見直し、衝撃に対する安全性を保ちながら、脱進機自体を薄くすることに成功しています。
さらに、グレード5チタン製の可変慣性テンプを採用。精度の安定性を高めつつ、長期間にわたって優れたクロノメーター性能を発揮することを目指しています。
ここまでくると、もはやデザインの話だけではありません。薄型時計を作るために、ムーブメントの心臓部そのものから作り直しているのです。
薄いケースに既存の機構を押し込むのではなく、薄さに合わせて機構を再発明する。RM UP-01の価値は、まさにこの発想にあります。
フェラーリらしさは、派手さではなく思想に宿る
フェラーリらしさは、派手な装飾ではなく、素材・構造・性能への思想に宿る。
フェラーリとのコラボレーションと聞くと、赤いカラーリングや大胆なロゴ使いを想像するかもしれません。
しかしRM UP-01 フェラーリの魅力は、そうした分かりやすい装飾だけではありません。
素材の選び方、薄さへの挑戦、耐久性の確保、機械としてのパフォーマンス。こうした部分にこそ、フェラーリとリシャール・ミルの共通する価値観が表れています。
エレガントでありながら、明確にスポーティー。美しさが装飾ではなく、機能から立ち上がっている。そこが、この時計の一番かっこいいところです。
車でいえば、ただ派手なボディカラーにするのではなく、空力や軽量化、素材選びによって速さと美しさを作る感覚に近いでしょう。RM UP-01もまた、機能からデザインが立ち上がっている時計です。
日常時計ではなく、“知識として読む価値”のある時計
RM UP-01 フェラーリは、誰にでもおすすめできる時計ではありません。
価格帯や希少性はもちろん、デザインもかなり特殊です。一般的な意味での視認性や汎用性、合わせやすさを求めるなら、もっと選びやすい時計はたくさんあります。
それでも、この時計を知る価値があるのは、腕時計というジャンルの限界を押し広げているからです。
時計はどこまで薄くできるのか。薄くしても強度や精度は保てるのか。ケースとムーブメントの関係はどう設計し直せるのか。
RM UP-01は、そうした問いに対するひとつの答えです。
買えるかどうかではなく、時計製造の考え方を知るために読む。そんな見方をしても十分に面白い一本だと思います。
この時計が刺さる人
時計製造の限界に挑む、150本限定の特別なモデル。
- 技術の限界に挑む時計が好きな人 厚さ1.75mm、ムーブメント厚1.18mmというスペックは、数字だけでも異次元です。時計製造の挑戦そのものを楽しめる人に向いています。
- フェラーリの思想に惹かれる人 単なるロゴコラボではなく、素材、構造、性能にフェラーリらしい美学が反映されています。
- 人と被らない特別な時計を求める人 150本限定という希少性もあり、所有すること自体に強い意味を持つ一本です。
- プロダクトデザインとして時計を見たい人 装飾やブランド名だけではなく、構造、素材、薄さ、操作方法まで含めて楽しめる時計です。
もちろん、日常的に気軽に使う時計というより、時計というジャンルの限界に挑んだ特別な作品として見るべきモデルです。
ただ、その挑戦を腕に乗せられるという意味では、これほどロマンのある時計もなかなかありません。
ディテールで見る、RM UP-01 フェラーリ
RM UP-01 フェラーリの薄さ、構造、ムーブメント、ディテールを一覧で確認できます。
まとめ:RM UP-01 フェラーリは、薄さの先にある“技術の美しさ”を見せる時計
リシャール・ミル「RM UP-01 フェラーリ」は、単なる超薄型時計ではありません。
厚さ1.75mmという驚異的なスペック、グレード5チタンによる剛性、手巻きウルトラフラットムーブメント、特許取得の脱進機、そしてフェラーリとの思想的な共鳴。
そのすべてが組み合わさることで、時計というより、エンジニアリングとデザインの到達点のような存在になっています。
装飾で魅せるのではなく、構造で魅せる。薄さそのものがデザインになり、技術そのものが美しさになる。
日常的な使いやすさだけで評価する時計ではありませんが、時計製造の可能性を知るうえでは非常に面白い一本です。
RM UP-01 フェラーリは、リシャール・ミルとフェラーリが本気で作った、“薄さの向こう側”を感じさせるモデルと言えるでしょう。
RICHARD MILLE / リシャール・ミル
RM UP-01 フェラーリの詳細は、リシャール・ミル公式サイトでも確認できます。
公式サイトを見る
WARDROBE LAB編集部のひとこと
RM UP-01 フェラーリは、スペックだけを見ると“薄さ”が先に目に入る一本です。
ただ、よく見るほど惹かれるのは、薄くするために何を削り、何を残したのかという設計思想の部分。装飾ではなく構造そのものが美しさになっているところに、リシャール・ミルらしさを感じます。
フェラーリとのコラボレーションも、ロゴやカラーの演出ではなく、性能と素材への考え方でつながっているのが面白いところ。時計好きだけでなく、プロダクトデザインや車の思想が好きな人にも刺さるモデルだと思います。