機械式時計と長く付き合うために。大人が知っておきたい手入れとオーバーホール

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MECHANICAL WATCH GUIDE VOL.4

機械式時計と長く付き合うために。大人が知っておきたい手入れとオーバーホール

機械式時計を一本買うと、次に気になってくるのが「これ、どう扱えばいいのか」という話です。

クォーツ時計なら、電池が切れたら交換する。それでほぼ完結します。ところが機械式は、そうはいきません。時間は少しずれますし、しばらく置いておけば止まります。数年に一度は分解して整備する必要もあります。

ただ、身構えるほど難しいことはありません。日々やるべきことは驚くほど少なく、覚えておきたい「やらないほうがいいこと」も数えるほどです。

連載の第4回は、機械式時計と長く付き合うための扱い方を整理します。

機械式時計は「多少ずれるもの」として付き合う

最初に押さえておきたいのが、精度の考え方です。

機械式時計は、ゼンマイと歯車という物理的な仕組みで動いています。温度や姿勢、ゼンマイの巻き具合によって進み方が変わるため、一日あたり数秒から数十秒のずれが出るのは正常な範囲です。

クォーツ時計が月に数秒しかずれないことを考えると、精度だけで比べれば勝ち目はありません。けれど、機械式時計はそこを競う道具ではないと考えたほうが、付き合いやすくなります。

気になるなら、週に一度だけ時刻を合わせ直す。それで十分です。むしろ「毎週きちんと直す」という習慣そのものが、機械式時計を持つ楽しさの一部だったりします。

ただし、急に一日で数分ずれるようになった、まったく動かなくなったという場合は別です。これは調整や修理のサインなので、後述のオーバーホールを検討してください。

一日に数秒から数十秒のずれは、故障ではありません。

急に精度が大きく崩れたときだけ、点検を考えれば十分です。

毎日の手入れは、拭くことがほぼすべて

日常のケアで大切なのは、実はひとつだけです。外したら拭く。それだけです。

腕時計は、一日中肌に触れています。汗、皮脂、日焼け止め、ほこり。こうしたものがケースとブレスの隙間に溜まっていき、放っておくと金属のくすみや、革ベルトの傷みにつながります。

使い終わったら、乾いた柔らかい布でケースの裏側とベルトを軽く拭く。所要時間は10秒ほどです。これを続けているかどうかで、数年後の見た目にはっきり差が出ます。

メタルブレスの隙間の汚れが気になってきたら、柔らかい歯ブラシで軽くこすってから、水気をしっかり拭き取ってください。防水性能のある時計であれば、リューズが確実に押し込まれている状態で行えば問題ありません。

部位別、日常の手入れ

  • ケース裏・ラグの間 いちばん皮脂が溜まる場所。外したら乾いた布で拭く習慣をつけたい。
  • メタルブレス コマの隙間に汚れが入りやすい。柔らかいブラシで落とし、水気は完全に拭き取る。
  • 革ベルト 汗が最大の敵。夏は特に傷みが早い。連日使わず、休ませる日をつくる。
  • 風防(ガラス面) 指紋は乾いた布で。硬いものと一緒に置かないだけで、傷はかなり防げる。
  • リューズ 時刻合わせのあとは、必ず最後まで押し込む。ねじ込み式なら締め切る。

オーバーホールは、何年ごとに、いくらかかるのか

機械式時計には、オーバーホール(分解掃除)という定期整備があります。

内部の部品を分解し、古い油を落として洗浄し、新しい油を差して組み直す作業です。時計の中の潤滑油は年月とともに劣化し、放置すると部品同士が削れて、修理費が跳ね上がります。

周期の目安は3〜5年に一度と言われます。ただし実際には、使用頻度や保管環境によって前後します。毎日使っていて精度が安定しているなら、5年に一度でも問題ないことが多いです。

費用は、時計のブランドや構造によって幅があります。あくまで一般的な目安ですが、シンプルな三針の国産モデルで数万円程度、スイスの高級ブランドや自動巻きクロノグラフになると10万円前後まで見ておくと安心です。複雑機構を積んだモデルは、さらに上がります。

正直に言えば、安い機械式時計ほど「オーバーホール代のほうが本体価格に近づく」という現象が起きます。それも含めて、機械式時計は買ったあとにお金がかかる道具だと理解しておくと、あとで驚かずに済みます。

依頼先は、ブランドの正規サービスセンターと、独立した時計修理工房の二択です。正規は純正部品と保証が確実、工房は費用が抑えられて相談しやすいという違いがあります。資産価値を重視するモデルなら正規、日常的に使う一本なら工房、という選び方が現実的です。

オーバーホールを考える目安

  • 周期 3〜5年に一度が一般的な目安。精度が安定していれば、慌てて出す必要はない。
  • 出すべきサイン 一日のずれが急に大きくなった。巻いてもすぐ止まる。リューズが妙に重い。
  • 費用の目安 国産の三針モデルで数万円、スイスの高級ブランドで10万円前後まで見ておきたい。
  • 期間 数週間から、混み合う時期は数か月かかることも。手放す期間を見込んでおく。
  • 依頼先 正規サービスは確実性、修理工房は費用と相談のしやすさ。用途で選ぶ。

やらないほうがいいこと、5つ

機械式時計を傷める原因の多くは、扱い方のちょっとした習慣です。知っているだけで避けられるものばかりなので、ここだけは覚えておいてください。

1|夜の時間帯に日付を変える。多くの機械式時計は、20時から翌朝4時ごろにかけて日付の切り替え機構が動いています。この時間帯に日付を手動で送ると、歯車に負担がかかります。日付を合わせるときは、いったん針を昼の時間に進めてから操作してください。

2|磁気の近くに置く。意外な落とし穴です。スマートフォンやノートPCのスピーカー部分、マグネット式のタブレットカバー、バッグの磁石留め。こうしたものの近くに置き続けると、時計が磁気を帯びて精度が大きく狂います。急に一日数分ずれ始めたら、まず磁気を疑ってください。

3|リューズを開けたまま水に触れる。防水性能は、リューズが完全に閉まっている状態で初めて成立します。手を洗う前に、押し込まれているか確認する習慣を。

4|手巻き時計を巻きすぎる。手巻きは、巻いていって抵抗を感じたらそこで止めます。無理に回すとゼンマイを傷めます。自動巻きは通常、巻き上がると内部で滑る仕組みになっているので、この心配はありません。

5|落とした・強くぶつけたのに放置する。外側に傷がなくても、内部の部品がずれていることがあります。しばらく様子を見て精度が崩れているようなら、早めに点検を。

いちばん多いトラブルは、磁気帯びと、夜間の日付操作です。

この2つを避けるだけで、機械式時計はかなり長持ちします。

夏に気をつけたいこと

日本の夏は、機械式時計にとって決して優しい季節ではありません。

まず汗です。革ベルトは汗を吸って劣化し、においも残ります。夏場は革ベルトの時計を連日つけず、メタルブレスやナイロン、ラバーと使い分けるのが現実的です。革ベルトを使った日は、内側を必ず乾いた布で拭いてから休ませてください。

次に温度差。冷房の効いた室内と外気を行き来すると、ケースの内側が結露することがあります。風防の内側に曇りが出たら、それは内部に湿気が入っているサインなので、早めに点検に出したほうがいいです。パッキンは経年で硬くなるので、防水性能は買ったときのまま永遠に続くわけではありません。

そして保管場所。直射日光の当たる窓際や、車の中は避けてください。高温は油の劣化を早めます。

まとめ:手をかけるほど、道具としての顔になる

機械式時計を長く使うためにやることは、実はとてもシンプルです。

外したら拭く。磁気から遠ざける。夜に日付を動かさない。リューズを閉める。そして数年に一度、オーバーホールに出す。

この5つを守っていれば、機械式時計は驚くほど長く動き続けます。何十年も前の時計が今も現役で使われているのは、こうした手入れが積み重なった結果です。

手間がかかることは、必ずしも欠点ではありません。服も靴も、手をかけたものほど、その人らしい表情になっていきます。時計もまったく同じです。

買ったときがいちばん美しいのがクォーツ時計だとすれば、使い込むほど自分のものになっていくのが機械式時計。少し面倒なくらいが、ちょうどいい距離感だと思います。

WARDROBE LAB編集部のひとこと

編集部が持っているのは、HUBLOTのクラシック・フュージョン1本だけです。

2015年に購入して、今年で10年目になります。オーバーホールに出したのは一度だけで、このときは費用がかかりませんでした。

使ってみていちばん意外だったのは、45mmというサイズの重さでした。デザインで選んだので後悔はありませんが、一日つけていると腕には確実に残ります。


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※掲載している情報は記事公開時点のものです。オーバーホールの費用・期間は、ブランドや依頼先によって異なります。最新情報は各ブランド公式サイト・修理窓口にてご確認ください。
※画像・商品情報は、各ブランド・公式サイト・販売サイトの公開情報を参照しています。

WRITTEN BY

WARDROBE LAB編集部

WARDROBE LAB / Editorial Team

30代・40代・50代のメンズファッションをわかりやすく・丁寧に伝えるメディア「WARDROBE LAB」の編集チームです。

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